幅広い決済手段を求める要望に対応し、国内外の新たなユーザーを獲得。
導入後、1年半で売上は約4倍に。リアルタイム入金で出荷業務も効率化。
同社はすでに月額会員費の決済にペイパルを導入していたが、BOOTHの課題解決にも有効ではないかと考えたそう。
「それまでBOOTHでは、クレジットカード2社もしくはコンビニ振込を主な決済手段としていましたが、多様な決済手段に対応してほしいというお客様からの要望が多くあがっていたため、決済手段を増やせば売上は上がるだろうと予想はついていました。しかし、限られたリソースの中、新たな決済手段の導入にはハードルがあったのです」
そう語るのはピクシブ株式会社クリエイター事業部部長であり、BOOTHのプロダクトマネージャーを務める重松裕三氏。
そもそもBOOTHのサービスでは、一回の売買成立につき、BOOTHに入る手数料は3.6%。料率の高い決済システムでは収益が見合わない、という課題もあった。
そのような状況で候補にあがったのは、すでにpixivプレミアムという有料会員費の決済手段として利用していたペイパルだった。
ペイパルが銀行口座振替に対応予定であったことにも新たなユーザー層を取り込めるのではという期待があったという。BOOTHでは若年層の利用者も多い。こうしたユーザーはクレジットカードを使うことに抵抗を感じたり、そもそも、クレジットカード自体を所有しない人も多く、決済手段は幅広く揃えたいという考えもあった。ペイパルが従来より対応していたデビットカードに加え、銀行口座振替に対応することで、クレジットカードを使わないユーザーにも新たに使ってもらえると考えたのだ。
「最初の担当者との打ち合わせから導入まで約3か月と非常にスピーディでした」と重松氏。
ペイパル導入の効果はすぐに現れたという。まずは、コンビニ決済で発生していた在庫管理の課題だ。
「クレジットカードを持たないユーザーでも利用できるコンビニ決済ですが、決済期限までの猶予が長く、販売側からするとその間、在庫を確保しておく時間や手間が発生する上、支払われずにキャンセルされてしまうリスクもあります。ペイパルでは、リアルタイムに入金されるので出荷業務が大幅に効率化され、キャンセルのリスクも減らすことができました。支払い期限をすぎてしまった、などの決済に関する問い合わせもかなり減り、助かります」と重松氏。
作品はBOOTHが管理する倉庫から配送されるだけでなく、クリエイターから直接買い手に送ることもできる。つまり、即時決済の利便性は、作品の制作者(クリエイター)にも同様のメリットをもたらすということだ。
当初の狙いだった売上UPの効果も数字に現れている。ペイパル導入当初の2017年6月と取材当時の2018年11月現在で比べると、ペイパルでの国内の売上は4倍に増えており、ペイパルがBOOTHの売上成長に大きく貢献している。
「ペイパルが銀行口座振替に対応した際には、積極的に自社メディアで告知しました。ペイパルの便利さやセキュリティの高さを既に知っている人にとっては特にインパクトが大きかったようで、直後から『これでようやくBOOTHを使えるようになった!』という反響の嵐。ようやく彼らの期待に応えることができたのです」(重松氏)
現在、海外ユーザーの決済手段におけるペイパルの利用率は約30%にもなる。その数字はほぼそのまま、導入しなければ発生し得なかった新規ユーザーの開拓だという。さらに、2018年11月より、海外ユーザーへの送金が可能になるペイパルのペイアウト(※)を導入した。この機能を活用すれば、複数のアカウントに一括で送金できるため事業者にとっては利便性が高い。
「銀行間で直接送金するよりも安価な手数料で、かつリアルタイムに送金できる決済システムを海外ユーザーに適用できるようになったことは、私たちにとって大きなメリットでした」(重松氏)
※ペイアウトのご利用には審査が必要です。
これまでは同人誌やイラストレーションなどリアルな作品のやり取りが中心だったが、今後はデジタルコンテンツの需要がますます高まり、コミュニケーションの在り方も変わってくるだろう、と予測する重松氏。すると海外在住のクリエイターにとっても利用のハードルが下がり、収入を得る新たな機会が生まれる。今後の展望について、重松氏はこう語ってくれた。
「pixivの有料会員費や広告費とともに、BOOTHなどのサービスを新たな事業の柱として育てていきたいと考えています。またイラスト文化の高まりは今や世界中に波及しており、海外からのニーズにも対応していかなければなりません。そうして常に変化しつつある状況の中で、汎用性が高く、ユーザーにとって、またサービス提供者にとってもメリットの多いペイパルを決済手段として導入できたのは劇的な変化でした」